Storyで紡ぐたび

もののあはれ中南勢ものがたり

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    松阪の女性の手から生まれた美しき縞模様

    「松阪もめん(御糸織(みいとおり))」は、藍染の縞が特徴の木綿織だ。

    御絲織物株式会社の西口裕也社長は、その魅力について「天然染料の独特の風合い、飽きのこない色、洗うほどに色が冴え、使い続けるほどになじんでくるところ」と言う。

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    いくつかの縞を見せてもらったが、どの縞も洗練されていてとてもカッコいい。

    この縞模様は、安南(ベトナム)からもたらされた嶋渡りの「柳条布」がルーツと言われ、それが、伊勢神宮の布を織る機殿の女性たちの間で、現在のように洗練されていったのだとか。

    昔はこれがフツーに野良着になっていたそうだが、松阪の女性たちの優れたデザイン感覚や色彩感覚にはまったく脱帽である。

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    「松阪もめん」と「御糸織」

    しかし、そこである疑問が湧いてくる。「松阪もめん」と「御糸織」。どう見ても同じ素材、同じ柄のようだが、どうしてふたつの名前が存在するのだろう…?

    伊勢平野南部の御糸五郷(多気郡明和町~松阪市)は、古くから続く紡績の中心地。
    ここには麻と絹を織って伊勢神宮に納める「機殿」があり、女性たちは皆、より質の良い御糸織を奉献するため、努力を続けていた。

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    そのかいあって、江戸時代には、「越後屋(後の三越)」の三井家など松阪商人によって運ばれた御糸織が爆発的な人気に。

    質の高さ、デザイン性の良さはもちろんだが、ここまで一世風靡したのには、おそらく松阪商人の機転があったのではないだろうか、と思う。

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    そう、松阪商人たちは、白子湊からまとめて出荷される際に「御糸織」を「松阪もめん」という名で販売した。
    松阪のブランドを背負った御糸織は、旅人の間でとにかく人気となった。

    今でも歌舞伎役者が縞模様の着物を着ることを“マツサカを着る”と呼ぶほど。つまり、商魂に優れた松阪商人たちのネーミング商法は、大成功だったというわけだ。

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    唯一残る御糸織の工場として

    明治7年創業の御絲織物株式会社は、染織一貫生産する工場。
    もともと紺屋(染め)として始まり、やがて織物も手掛けるようになって現在の形になったという。

    最盛期は周辺に1,000軒もあったという機屋だが、今でも続けているのはたったの1軒となってしまった。

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    「デザインやアイデアを練るだけなら、こんなに楽しいことはないのにって思いますよ」と西口社長。

    厳しい時代を乗り越えて、それでも前を向いて歩きだす。それは、誰よりも御糸織を愛しているから。

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    町をあげて御糸織を応援

    「御糸織の唯一の工場として、責任を感じている。明和町でも、御糸織を大事に思ってくださって、いつも応援してくれていますし、頑張って続けていかないとね」。

    明和町では2013年度に御糸織のシャツを職員や議会議員の夏の制服として採用。町役場職員は、7月は毎水曜日をクールビズデーとして、御糸織のシャツを着ている。

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    新しい感性で新しいの御糸織の時代へ

    地元では伝統であるが、御糸織のクール&シックなデザインは、ところ変われば、新鮮なものとして受け入れられ、新しい流れも生まれようとしている。

    「この古きよき伝統は残しつつ、違った感覚を取り入れた新しいものにも挑戦したい」…西口社長の熱き挑戦は続く。

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    日本人をさらに美しく見せる服

    「松阪もめんに惚れこんで、自分で作ってみたくてここに来たんです」と話すのは、松阪もめんを愛してやまない「手織りセンター」の田中茂子さん。

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    かつてはブランド服が大好きだった田中さんだが、松阪もめんの美しさと洋服にしたときの着心地のよさに触れ、考えが180度変わってしまったのだとか。

    「松阪もめんの服は、より美しくその人の魅力を引き出してくれます。この藍の色合いは、日本人の肌にとっても合うんですよ」。

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    着てこそ分かる松阪もめんの魅力

    あんまりうれしそうに田中さんが話すので、ついその気になって、入荷したばかりのコートを羽織らせてもらった。
    思った以上に軽い。そして温かい。しかも、顔なじみもいい。
    ああ、他も着てみたい(うずうず)。

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    この素晴らしい伝統工芸を、廃れさせてはいけない!…と気張っているのではなく、単純にこの木綿が大好きで大好きで…と幸せそうに語る田中さんの姿に、正直驚く。
    そしてナットクした。

    だってすっごく素敵なんですよ、ここの服。
    ココに来たら、ぜひ羽織ってみて。この着心地こそ、先人の知恵なのだから。

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    布に親しむ

    ~写真で紡ぐたび~

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      <御絲織物株式会社>
      糸染めから機織りまで一貫して行う唯一の工場。まちかど博物館として一般公開されているので、国の無形民俗文化財である松阪もめん・御糸織が、どのように作られているのか、覗いてみては。

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      <御絲織物株式会社>
      御糸織の商品は、同社のほかに斎宮歴史博物館横「あざふるさと」、いつきのみや歴史体験館前「いつき茶屋」で購入できる。

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      <松阪もめん手織りセンター>
      「機織りは何もかも忘れて没頭できるんですよ」…女性をとりこにする機織りを体験。タンタンシャーッ、トントンと小気味いい音をさせながら、作品づくりに挑戦してみよう。

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      <松阪もめん手織りセンター>
      土の香りをいっぱいふくんだ正藍(あい)染めの糸をベースに、豊富なシマのバリエーションを誇る松阪もめんは、かつては粋(いき)好みの江戸庶民のファッションでした。

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    コンシェルジュからのおすすめのポイント!

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    コンシェルジュ
    ライター 宍戸さん

    初めて見て以来、その縞のカッコよさに惚れ、名刺入れを購入。松阪に行くたびに、キーケースやノートなど小物を増やしていきました。
    松阪もめん手織りセンターは、松阪もめんを使った商品が多数あり、体験もできるので、とても楽しいですよ。今度は、着付けに挑戦してみようか、コースターを自作してみようか、服を購入してみようか…と思案中。
    このハマりよう、自分でも意外でした。ぜひ触れて、その良さを実感してみてください!

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    スポット概要

    御絲織物株式会社

    御絲織物株式会社

    住所
    多気郡明和町大字養川甲373-1
    お問い合わせ
    0596-55-2217
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    松阪もめん手織りセンター

    松阪もめん手織りセンター

    住所
    松阪市本町2176番地 松阪市産業振興センター1階
    営業時間
    9:00~17:00
    体験コースは9:00~15:00
    休館日・料金・アクセス・駐車場
    公式サイトをご確認ください。
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