Storyで紡ぐたび

もののあはれ中南勢ものがたり

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    日本三観音のひとつ「津観音」

    東京都の浅草寺「浅草観音」、名古屋の「大須観音」に並び日本三観音のひとつに数えられる「津観音」。

    この寺は、奈良時代の初頭、伊勢阿漕ヶ浦(あこぎがうら)の漁夫の網に聖観音立像が掛かり、これを本尊として開山したことが始まりと言われている。

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    空前の伊勢神宮の参拝ブームが起きた時には、伊勢に向かった多くの人が立ち寄り「津に参らねば片参り」と言われるほどに。

    多くの名だたる戦国大名や徳川家からも多くの寄進を受け、確かに日本三観音のひとつにふさわしい立派な寺だったという。

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    何があっても「人」が支えた

    明治維新後は、長年の藩主や将軍家の庇護を受けられなくなったものの、庶民の祈願所として再び興隆する。だが、空襲によって爆撃を受けてしまい、そのほとんどを焼失(それでも戦火の中、僧侶たちは多くの本尊様をはじめ、多くの宝物を守ったのです)。

    それでも戦後の再建はすごいものだった。1968年には観音堂、12年後に仁王門、4年後に鐘楼堂、2年後に手水舎…と再建に向けてひた走ってきた。2001年に資料館と県下では初めてとなる木造五重塔が完成。これがすべて、この寺を支える多くのこの寺を想う多くの市民(庶民)によって実現されている、というのが素晴らしい。

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    取材では岩鶴密伝副住職が案内してくれたのだが、彼が次の世代、新しい津観音を作る人だと感じた。
    音楽イベントと融合した津観音縁日祭、よみがえった「鬼押さえ」の行事…津を盛り立てようとする新しい波が、ちゃんとここにあるのだなぁ

    。歴史書には書かれていないけれど、きっと昔からこんな魅力的な僧侶たちが寺を盛り立て、市民(庶民)の心をつかんできたに違いない。

    うん、きっとそうだ。

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    残忍な奇祭「鬼押さえ節分」

    余談になるが、副住職に聞いた話が実に興味深かった。

    江戸時代に行われていた「鬼押さえ」という儀式。
    観音像を盗みに来た鬼を侍が退治した、という伝説にちなんだもで、境内に「鬼」(罪人)をはなして、武士に扮した浜の若者が真剣(刀)で切り付けるという残忍なものだったとか。

    あまりにヒドいということで、のちに真剣が青竹に代わり、罪人を境内に放つこともなくなったらしいが、「中止になったら不漁になった」ということで復活。

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    ウソみたいだが、当時の絵「伊勢参宮名所図会」にも描かれている。

    そして平成9年、岩鶴密伝副住職らによって、なんと「鬼押さえ」の行事が復活(あくまで寸劇です!)。

    歴史の裏にいろんなドラマが潜んでいる…津観音は知れば知るほど面白い。さすが、日本三観音はだてじゃないですね!

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    山の上にある「長谷の観音さん」

    「あれっ、やっぱりここだ」…ナビに道がなくなり、車を止めてみると、山の入口に小さな鳥居を見つけた。
    小雨の降る中、そこから歩いて山を登る。意外に急な坂道だったのでしばらく歩くと息があがってしまった。

    「まだまだでしょ!」とからかうように言うのは、地域おこしグループ「一八会」の代表・逵昭夫さん。
    国の重要文化財の指定を受ける像高6.6メートルの「木造十一面観音立像」を、長谷地区の人々とともに守っている。

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    観音様はおしゃれな女王様

    近長谷寺(きんちょうこくじ)は伊勢の豪族「飯高宿禰(すくね)諸氏」が、第58代光孝天皇の勅願所として建立。

    「木造十一面観音立像」は、右手は施無畏印(せむいいん)、左手は水瓶を持つのが普通だが、錫杖を添えた姿をしており、これが日本唯一と言われている。
    豊満な胴体、ズングリムックリ型であるが、どっしりとしていて迫力がある。

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    見えないところに職人の技

    こんな大きな観音像をいったいどうやって作ったのか。
    「寄木造りですよ。数本の木材を組み合わせて作ってあるんです。ほら、ここに点々と跡があるでしょう」…両目の下から胸、足に向かって、確かに点々がある。
    「足を見ると、ほら」と逵さんが見せてくれたのは、黒いかたまり。「炭です。中は空洞になっていて、湿気取りのため炭が入っていたんです」…何百年経っても、今の世にこうやって残されている理由がわかり、とっても感動。

    観音像って見れば見るほど、心が安らいでくる。時間が許せば、ずっと像の前に座っていたかった。

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    地域の人たちに守られた観音様

    世帯数13、人口約40人の集落・長谷地区。そこで活動する地域おこしグループ「一八会」は、この素晴らしい木造十一面観音立像を村の宝として世に出すため、活動をスタート。
    「一八会」は長谷地区の人々とともに、除夜の鐘つきや護摩の復活など、近長谷寺を地道に盛り立てた。

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    「長い人生の中では怪我をしたり、病気をしたり、親しい人を亡くしたり、いろんなことが起こります。
    私の場合は事故を起こして大怪我をしました。命があって助かった時、ああ私は守られていると心から思いました。そこからは、もうひとつの人生だと思って観音さまのお世話をさせてもらっているんですよ」。

    観音像をいとおしそうに見つめる逵さん、その横顔はとても穏やかだった。

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    観音像

    ~写真で紡ぐたび~

    • 観音像

      <津観音>無事戦火を逃れた仏像たちも、戦後の混乱の中、水晶を埋め込まれた目を盗まれたりと様々なトラブルに見舞われた。ここにある仏像たちは、人の世の無常をいつも見つめている。

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      <津観音> 津の中心地として栄え、まちの鬼門を守るお寺。『鬼押さえ節分』(毎年2 月3 日)や、津市最大の祭典『津まつり』(毎年10 月の第2 土日)では多くの人で賑わいます。

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      <近長谷寺>十一面観音のある方角にも意味がある。水銀のあった丹生から北東の方角が鬼門で、その方向を向いて立っている。

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      <近長谷寺>観音様のご真言は「オンマカキャロニキャソワカ」。サンスクリット語を日本語風に発音したもので、言葉の意味よりも真言が発する波動に意味があるのだそう。

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  • か

    観音像

    コンシェルジュからのおすすめのポイント!

    観音像

    コンシェルジュ
    ライター 宍戸厚美さん

    観音像について書く…はずが、どうしても書き留めておきたかったのが「人」のこと。
    観音像はとても魅力的で、そのものの美しさに見惚れてしまいますが、観音さんを中心に町を盛り立てようとしている周りの方々にも観音様と同じく美しさは宿っているのだなぁと感じました。
    観音像を見るなら、ぜひその地域にも目を向けてみてはいかがでしょうか。

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  • か

    観音像

    スポット概要

    津観音

    津観音

    住所
    津市大門32-19
    アクセス
    JR/近鉄「津駅」から「三重会館」方面行き三交バスで約5分
    「京口立町」から徒歩で約3分
    ・伊勢自動車道「津IC」から車で約10分
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    近長谷寺

    近長谷寺

    住所
    多気郡多気町長谷202
    営業時間
    拝観:日.祝日.毎月18日 10時~16時
    アクセス
    JR紀勢本線「佐奈駅」徒歩 約50分
    JR/近鉄「松阪駅」から「三瀬谷」行きバス26分「前村」下車・徒歩 約60分
    ・車 伊勢自動車道「勢和多気IC」約15分
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