Storyで紡ぐたび

もののあはれ中南勢ものがたり

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    幻の宮・斎宮は“エリート官庁街”

    斎宮とは、天皇に代わって伊勢神宮に仕えた未婚の皇女・斎王の宮殿のこと。斎宮は、斎王がおかれた古代から中世にかけての約660年間、いわゆる官庁街として500人余りが勤務し、都にも劣らぬ雅な文化の中心地だったとか。
    のどかな田園風景が広がるこの明和町に、かつては都のようなきらびやかな貴族の世界があったとは、実に興味をそそられる。

    碁盤の目状に20余数に分けられた区画には檜皮葺(ひわだぶき)のオフィスビルが立ち並び、都から下ってきたエリート官僚たちが街を闊歩する…想像はどこまでも続いていくのであった。

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    斎王は人生をかけたお勤め

    斎王については、天武2(674)年、壬申の乱に勝利した天武天皇が天照大神に仕えるため、娘の大来皇女を伊勢神宮に遣わしたという記述があり、それが斎王制度の始まりとされている。天皇が即位すると、皇族の女性の中から「斎王」が選ばれて派遣された。これは、どうやって決められたのだろうか。

    「占いです。動物の骨を焼いて、そのひびの入り方で決めたりしていたようです」と斎宮歴史博物館学芸員の船越さん。
    それって、かなり微妙なのでは…。いずれにしても“神様の言う通り”というわけで、遺恨を残さぬような決め方だったのかも。

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    選ばれた斎王は、家族や慣れ親しんだ都での生活と別れ、200人余りもの従者に伴われて、斎宮へ向かう。伊勢神宮に仕えるのが仕事とはいえ、伊勢神宮におもむくのは年3回(しかも大玉串を奉るだけ…)。それ以外は、斎宮でひたすら祈りの日々を過ごすのだ。神に仕える身であるから、もちろん恋愛はご法度。しかし斎王だって生身の女性、秘めた恋のひとつぐらいはあるはずだ。

    「そうですね、歴代斎王の中には恋愛がばれて解任されたり、恋人と引き裂かれたり…そんなこともあったそうですよ」
    うう、つらい。聞いているうちに、斎王のことがだんだん愛おしくなってきた。

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    町全体で斎宮の世界を体感する

    明和町は斎宮をリアルに体感できる全国でも数少ないサイトミュージアムだ。つまり、町全体が斎宮についての博物館というわけ。

    例えば、斎王が禊をしたと伝えられている川「祓川(はらいがわ)」、斎宮の中でもとりわけ重要な場所だった内院の一画にある竹神社、奈良時代の古道、土器溜まりなどなど、数多くの遺跡旧跡を見ることができる。

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    その中でも注目されているのは、平成27年10月24日にオープンした「さいくう平安の杜」目玉はもちろん平安時代前期の復元建物3棟(正殿・西脇殿・東脇殿)。発掘調査で分かった場所に、当時と同じ建築技法で建てられたこだわりの建物だ。
    ここに来ると、まさしく自分が斎宮の住人になったかのよう!巡りたい場所が増えて本当にウレシイ。

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    さらに、ここからは面白い出土もあった。斎王が居住する内院から出土した墨書土器だ。
    土師器(はじき)の皿に「ぬるをわか」、「つねなら」とひらがなで書かれており、ひらがなで書かれた「いろは歌」として日本最古のものだとか。斎王に仕える女官が、文字を覚えるために書いたとみられ、現地で採用された女官が都から来た教養の高い女性に文字を教わっていたのではないかと言われている。

    何がすごいって、ひらがなはどうやって広まっていったのか、斎宮が都文化とどうつながっていたのか分かる資料だということ。ほら、斎王だけじゃなく、女官たちの生活もリアルに想像できてきませんか。

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    知れば知るほど斎宮が好きになる

    実際、斎宮跡をぐるりとまわってみると、斎宮のことをより理解できるようになった。斎宮の姿が思い浮かべられるようになったところで、斎宮の魅力についてあらためて船越さんに聞いてみた。

    「斎宮は、そのトップを女性が務めるという、女性が活躍していた時代の象徴。昭和45年の調査から45年以上経ちますが、まだ2割程度しかわかっていません。これからの調査でどんどん謎のベールをはがしていくのが楽しみですし、その中でみなさんにも“当時の人たちはどんなことをしていたのだろう”と想像してもらいたいですね。それが、歴史に親しむということだと思います」。

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    そう、斎宮跡をたどれば、歴史がぐんと身近になることだろう。
    そして斎宮とともに形作られてゆく新たなまちの魅力に気付かされるはずだ。

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    平安絵巻がよみがえる「斎王まつり」

    花ショウブの咲く6月上旬には「斎王まつり」が開催され、きらびやかな王朝世界が色鮮やかによみがえる。

    初日の見どころは「前夜祭」。100を超える店が並び、県内外から多くの人が訪れるとか。二日目は、歴史ロマン広場から斎宮歴史博物館ふるさと芝生広場まで、斎王をはじめ、女別当、内侍、近衛使など総勢約120人が町を練り歩く「斎王群行」を行い、斎王一行が都から伊勢へ向かうワンシーンを再現。
    色とりどりの衣装も美しく、これぞ平安絵巻!風情あるまつりに心が躍ることだろう。

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    平安絵巻

    ~写真で紡ぐたび~

    • 平安絵巻

      伊勢に群行してきた斎王が、斎宮に入る前に禊をしたという「祓川」。江戸時代にも伊勢神宮に参拝する旅人が禊をしたと伝えられている。

    • 平安絵巻

      斎宮の中でも特別重要な場所であったといわれている内院の一画だったと考えられている「竹神社」。

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      「斎王の森」は伝承では斎王の御殿があった場所とされていたが、発掘調査で方格地割の北側にあることがわかった。石碑や黒木の鳥居がある。

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      歴史ロマン広場の外周道路「柳並木」は、溝が掘られ柳や松が植えられていたとか。当時の風景を再現した道だ。

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    平安絵巻

    コンシェルジュからのおすすめのポイント!

    平安絵巻

    コンシェルジュ
    斎宮歴史博物館 船越さん

    日本遺産に認定された「祈る皇女斎王のみやこ 斎宮」。
    明和町には、斎宮の世界を体現できる施設や遺跡がたくさんあり、「斎宮歴史博物館」、「いつきのみや歴史体験館」、「さいくう平安の杜」の3か所をまわると、当時の様子がリアルに分かるのでおすすめです。
    斎宮に関しては、文献や歴史書に書かれていない部分が多く、まだまだ分からないことばかりです。ですから、そこからの謎解きにはあなたもぜひ参加してみてください。

    スポット概要

    斎宮歴史博物館

    スポット
    斎宮歴史博物館
    住所
    多気郡明和町竹川503
    営業時間
    9:30~17:00(入館は16:30まで)
    休業日等
    月曜(祝日の場合は開館)、祝日の翌日、年末年始
    料金・アクセス・駐車場
    公式サイトをご確認ください。
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