Storyで紡ぐたび

もののあはれ中南勢ものがたり

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    江戸時代から続く宮大工の技「伊勢一刀彫」

    近鉄「明星」駅前にある呑海さんの工房の奥で、まるで息を潜ませるかのようにじっとこちらを見ていたのは、「伊勢一刀彫」のかえるや猿たち。

    一刀彫の名の通り、一気に彫り上げた躍動感ある彫りが特徴。伊勢の宮大工が神殿を造営するときに出るクスノキの残材を使って、縁起のいい大黒様を彫ったのが始まりだとか。

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    そのうち、土産物として持ち運びやすいようにと作られた、煙草入れや印籠の留め具「伊勢根付」が旅人の間で評判になった。根付のモチーフは、ネズミやカエル、ひょうたんや猿など様々。

    例えば丸鼠は、毛1本1本まで細かく彫られ、ころんと可愛らしい形。「何ごとも丸く収まる」と洒落も効いた粋な土産だ。その江戸期の作風を今も受け継いでいるのが、木彫家・山中主計男さん…呑海先生である。

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    木から動物を掘り起こす木彫りの世界

    「伊勢根付」は、幕末から明治初期に活躍した根付彫刻名人・鈴木正直(まさなお)が大成させたもの。教員だった山中さんは、担任した生徒を通じて、正直の弟子である直弘さんに出会い、弟子入りした。

    「人の手でただの木が命をおびた動物になる。命が吹き込まれるのが素晴らしいと感じたんです」

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    休みになると直弘さんの家に入りびたり、作品をひたすら彫ったとか。初めてかえるの木彫が完成した時、うれしくてたまらず、そばに置いては、いつまでも撫でていた。自分の手で命が吹き込まれていく、その喜びは、呑海さんを木彫の世界へ導いていった。

    「木を見つめていたら“早く出して!”ってがまが呼んどる。耳を削り過ぎたら“痛い、痛い”と怒るんや。早くここから出してくれと私を呼ぶ。これはモデルと被写体の無言の対話ですよ。こうやってね、木の中に潜んでいるものを取り出してあげるつもりで、一削りひと削り心を込めているんです」

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    工房をまちかど博物館として公開

    小箱の引き出しには、今までに彫った根付がいくつもあった。集まって丸くなっているひょうたん、がまの頭のでこぼこ、ネズミの柔らかな体つき…映画じゃないが、本物の動物が突然、魔法にかけられて木になってしまったんじゃないか、と思うほどだ。

    「いくつ作っても、ちょっとずつ目つきや形の動きが違う。逆にそれが個性のようで、面白いなと感じます」
    木彫たちをいとおしく見る目…呑海さんは、この工房で動物たちとどんな会話を交わしているのだろうか。ひとりでいるのに、実に賑やかなまちかど博物館・呑海工房…ぜひのぞいてみては。

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    平飼い有精卵にこだわる養鶏場

    勢和多気インターを出ると、ひときわ目立つニワトリのモニュメントと「たまごかけごはん食べ放題」の看板に出会う。
    ものすごく気になったので、早速その「コケコッコー共和国・山の駅よって亭」へ。

    頼んだのはやはり、たまごかけごはんだ。弾力のあるプリッとした卵黄が、ツヤツヤと光っている。ほかほかご飯にくぼみを作り、卵黄、そして醤油を2、3滴。
    …ううーん、これは美味しい!甘くて濃厚、うまみが凝縮している。聞けばこの違いは、飼育方法とエサにあるという。

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    「コケコッコー共和国」の鶏は、「平飼い」という方法で育てられる。

    100m×6mの鶏舎の中に5500羽が自然に近い状態で飼われており、これは平飼い養鶏場としては日本一の大きさなのだとか。
    雌雄一緒にして、自然に近い状態で育てるのだから、ぎゅうぎゅう詰めのケージで育てられたものより味があって美味しいのも当然か。

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    ストレスを与えず自然の状態で育てる

    平飼いのメリットは、運動量が多いこと。水を飲みたい時、エサを食べたい時、卵を産みたい時を自由にさせることで、ストレスのない状態で元気な卵を産んでもらう。

    「鶏はストレスに弱く、その状態にあるといい卵もできません。なるべく自然のままで好きに過ごさせると鶏はとても濃厚でオイシイ卵を産んでくれます」と答えてくれたのは、入社3年目ながら、早くも鶏舎の管理を任されている若き主任・辻耕平さん。

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    「僕たちは、鶏舎に人が入る時もストレスを与えないように、物音をたてず、まるで空気のように作業をするんですよ」
    空気のように作業するとはいえ、実は、徐々に教えていかなくてはならないことがたくさんある。

    「身体ががっちりとできている鶏は安定して良い卵を産むので、小さなころからたくさん食べるように促します。そして卵は巣箱の中に産ませるのですが、巣箱以外で産んだ卵は出荷されません。ですから、水とエサと巣箱の場所をきちんと覚えさせることが大事なんです」
    これらのことを2週間かけて徐々に教えていくのだ。

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    次第に鶏たちがかわいくなってくる

    最初は怖がっていた鶏たちも、そのうち後ろをついてくるようになる。
    今では、顔を見ると3000羽の鶏たちが辻さんの動きに合わせて、ぞろぞろと後ろを付いてまわるようになったという。まるで、『ブレーメンの音楽隊』のようだ。

    「やっぱり世話をしていると個体差もわかるようになるし、それぞれ個性があってかわいいですよ」
    …鶏のことを話す時、とってもうれしそうなのが印象的な辻さん。少しでも良いたまごを産んでくれるようにと、愛情を持って育てているのが、話しぶりから伝わってくる。コケコッコー共和国の平飼い有精卵は、辻さんたち飼育員の愛情で生まれた美味しさなのだ。

  • め

    目利き

    ~写真で紡ぐたび~

    • 目利き

      いくつもの彫刻刀を使い分けながら一心に彫る。一刀入れながら、動物たちと会話をしている呑海さん…モチーフに対する愛情、探究心がなければ、この精密さは生まれないだろう。

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      触れていると手の脂が付き、それが根付につやを与える。江戸時代、それが粋だったのだとか。作りたてのものも美しいが、撫でられて色の変わった根付もまた深く美しい。

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      コケコッコー共和国のアンテナショップ「山の駅よって亭」。たまご食べ放題のたまごかけごはん(390円)をどうぞ。これまでの最高個数は10個だとか。

    • 目利き

      運動たっぷりで歯ごたえのよい平飼い鶏の焼き肉も楽しめる。ちょっと甘辛いたれとの相性も抜群!これは必ず食べていって!

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    目利き

    コンシェルジュからのおすすめのポイント!

    目利き

    コンシェルジュ
    ライター 宍戸さん

    伊勢一刀彫というものを初めて知りましたが、その可愛らしくユーモラスな姿に心を奪われました。ひとつひとつに意味があり、びっくりするほど複雑な細工なので、手に取って見てほしいです。
    また、コケコッコー共和国は、たまごかけごはんと鶏焼肉が最高!ココに来たらこのセットは、必ず食すべし。取材の日は、イベントとして高校生レストランの相可高校の生徒が、定番人気のだし巻きを販売していましたが、これも美味しそうでしたよ。
    それから、三重県から全国に売り込める逸品として「みえセレクション2015」に選定された「贅沢たまごジャム 新姫味」は、甘酸っぱく上品な味がするので、おみやげとしてオススメです。

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    目利き

    スポット概要

    呑海工房

    呑海工房

    住所
    多気郡明和町明星2569-3
    開館時間
    8:00~17:00
    体験(要予約)
    木彫り体験
    ご予約・お問い合わせ
    0596-52-5576
    アクセス
    近鉄明星駅下車徒歩1分
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    山の駅よって亭

    山の駅よって亭

    住所
    多気郡多気町丹生4409
    営業時間
    10:00~17:00
    お問い合わせ
    0598-49-3517
    車でのアクセス
    伊勢自動車道「伊勢多気IC」から3分ほど
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