Storyで紡ぐたび

もののあはれ中南勢ものがたり

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    美しい谷に希望の船を浮かべ・・・

    大杉谷は、西の黒部、近畿の秘境とも呼ばれ、日本三大渓谷、日本の秘境百選にも選ばれるなど、昔から登山者に人気のあった地だ。

    2009年9月の台風21号によって壊滅的な被害を受け、登山道閉鎖を余儀なくされていたが、2014年4月25日に登山道が全面復旧。そしてそれに合わせて登山道への連絡船と、平日は予約制の遊覧船が就航され、10年ぶりに“秘境の全面解禁”となった。
    運航するのは「旧大杉村再生協議会」。宮川ダムの建設によって移住した元住民らが集まって作った団体だ。

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    「我々が生きているうちに、ここが忘れ去られないうちに、今やらなければいけないと立ち上がったんです」。そう語るのは、代表の浅井さん。遊覧船の名前は、『望郷丸』とした。
    「我々が幼い頃を過ごした家は、ダムの下に沈んでいますけど、この美しい自然をぜひみなさんに知ってほしい。我々の自慢のふるさとですから」。

    船長の福山さんも、遊覧船の運航のために、操縦免許を取って里帰りした。
    「大杉谷は人が住んどらんけど、そのために守られた自然もある。遊覧船があることで、もっと身近になればうれしい」。

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    美しき湖面の世界に酔いしれる

    「よーし、では出発進行!」
    船は雄々しい岸壁と緑豊かな山々の中央を切るように走り出した。目の前に広がる一枚の絵画に突進するような感覚だ。
    しばらく走ると、湖面が安定して違った景色が見えてきた。美しくそびえる山々に、エメラルドグリーンの水面が鏡面のようになって、不思議な世界を映し出している。後ろを振り返ると、スクリューで波ができ、鏡面の景色がリボンのように幾重にも連なっていた。本当に、素晴らしい。

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    そして見えてきたのは、ダム湖に架かる真っ赤な橋、赤橋(新大杉谷橋)。
    そして、落差45mというダイナミックな大滝、六十尋(ぴろ)滝。
    写真を撮るには絶好のポイントだ。

    夢中になってシャッターを切っていると、「あれ見て」と船長が遠くを指さし、エンジンを止めた。シカの親子が崖を横切っている。

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    「禁猟中だからそこまで下りてくるの。船が悪いことしないのわかってるんやね」
    …シカはその後も何頭も見かけた。黒いしっぽを持った銀色のタヌキもやってきた。

    「今日は、またえらい出てきたなァ」と船長も驚くほどの歓迎?ぶりに、我々も興奮冷めやらず。そのままの自然に感激しきりだった。

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    大杉峡谷の魅力を満喫できる登山

    「ダムからの景色もすばらしいけど、大杉谷の魅力はもっとたくさんあるんです」と教えてくれたのは、御年85歳の古戸さん。
    例えば、大杉谷登山道は、三重県大台町と奈良県大台ヶ原を結ぶ中級者向けの登山道(※)。
    大杉峡谷の7つの滝と11本の吊り橋を越えて、原生林の森を抜けていく。特に、2014年4月まで10年間通行止めになっていた七ツ釜滝~堂倉滝のエリアは秘境の深部であり、見どころもいっぱいなのだとか。

    (※)大台町観光協会斡旋のプライベートガイド、または登山センターのガイド付きイベントを利用して安全に登山をお楽しみください。

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    標高が高くなるにつれて、植物の種類も変わり、春はツツジの仲間、秋には黄色に染まる原生林の森が楽しめる。「ここらの紅葉には、赤い色はないんですよ。それもまた変わってていいもんですよ」。

    よーし、次は紅葉の時期にぜひ来よう。緑から黄色へ、また違った表情が見られることだろう。

    (※)大台町観光協会斡旋のプライベートガイド、または登山センターのガイド付きイベントを利用して安全に登山をお楽しみください。

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    あなただけの絶景を見つけよう

    絶景とは、単純に美しい景色のことだと思っていたが、ここに来て、それは違うと感じた。絶景とは、圧倒的な自然の存在を感じること。
    浅井さんや船長の絶景は、きっと在りし日のふるさとの美しい記憶。
    私の絶景は、鏡面になったエメラルドグリーンの世界だ。それは今にも、胸に迫ってくるような景色だった。

    あなたの絶景は何だろう…ここに来て、感じてほしい。ここには想像以上の絶景があるから。

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    秘境

    ~写真で紡ぐたび~

    • 秘境

      垂直な岩山に挟まれた谷底にエメラルドグリーンの川面が映える。まるで一枚の絵画のよう。

    • 秘境

      「望郷丸」の船長・福山さんと古戸さん。息の合ったコンビが楽しくガイドをしてくれる。

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      野生の動物(シカ・サル・タヌキなど)が間近で見られるのも楽しみのひとつ。

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      大小多くの滝が見られる壮観な景色。登山道には滝だけでなく吊り橋も多く、すべて渡ると恋が叶うというウワサも。

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  • ひ

    秘境

    コンシェルジュからのおすすめのポイント!

    秘境

    コンシェルジュ
    旧大杉村再生協議会代表 浅井さん

    宮川ダム湖の観光遊覧船『望郷丸』は、ダムの底にある私たちの生まれ故郷が忘れさられることなく、後世に伝わっていって欲しいという願いをこめて就航した船。もう一度村の元気な姿を見たいと夢見る私たちにとって、とても思い入れがある船なんですよ。
    『望郷丸』は大杉谷登山センターとなりの大杉乗船場から登山道入り口に近い第三乗船場までの約5.3kmを片道16分で運行します。登山口まで遊覧船を利用していただくと、湖面から、山道からと2通りの魅力を一度に味わうことができます。現代では貴重となった、手つかずの自然を存分にお楽しみください。

    スポット概要

    宮川ダム湖観光船

    スポット
    宮川ダム湖観光船
    住所
    多気郡大台町久豆字浦平449-2 (一般財団法人 旧大杉村再生協議会)
    料金など
    公式サイトをご確認ください。
    公共交通機関でのアクセス
    JR三瀬谷駅→町営バス→大杉
    車でのアクセス
    紀勢自動車道→(大宮大台IC)→県道31号→国道422号→県道53号→大杉
    駐車場
    あり
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